博物誌

熊楠の曼荼羅とプチプチシート

家でコーヒーを飲んでいて、お菓子を包んであったプチプチシートを、妻がつぶしているのを見ていると、伝染したかのように、つぶしたくなってくる。この一連の過程は、前に掲げた熊楠の曼荼羅に対応するのではないかと思えてきた。 私たちの前に、たまたまプ…

「事」は「記号」である。

前回、熊楠のいう「事」は、パースの「記号」に対応することを述べた。南方曼荼羅が読み解けた気がして、思わず書いてしまったのだが、もう少し補足したい。そんなことを思っていたら、年が明けてしまったが、2015年の最初の書き込みとしたい。物と事の区別…

パースの記号論による南方曼荼羅の読み解き

前回、熊楠とパースとの関連について書いたが、鶴見和子のような有名人なら、その関連性を指摘するだけでインパクトもあるのだろうが、私がこのブログで書いたところで、単なる思いつきを述べているように思われるだけだろうから、そのとっかかりだけでも示…

南方熊楠とパース

なんとも長い間、ブログを書かなかった。前に書いたのが、8月のお盆の頃だったのが、もうすぐお正月を迎える時期になってしまっている。11月頃から、南方熊楠のことを考える機会があって、前回も南方熊楠のことを書いているので、そこから話をつなげたい。 …

明恵と南方熊楠

前回の記事で、「明恵の思い」から「蘇婆河 − 海 − 鷹島 ー 石」という物の連なりを考えたときに、華厳経のことを意識していた。私の仏教の知識は、実に怪しげなもので、なにかを理解しているなどとは、決して思ってはいないのだが、それでも、華厳経におい…

鷹島の石

鷹島の石に興味をもったことの発端は、妻の高校時代の友人が、和歌山県の湯浅町に住んでいて、今年の春の花見の時期に訪ねたときに、明恵上人の「われ去りて のちにしのばむ人なくは 飛びて帰りね鷹島の石」という歌を教えてもらったことである。歌の意味を…

しめ縄、ダイダイ、葉付き小みかん

以前は、お正月にしめ縄を飾る習慣はなかったのだが、今の家に住み始めて、なんとなく購入するようになった。それでも、最近は地域でも廃れて来ているのか、飾っていない家も多い。いつ片付けるのかもよくわからないまま、成人の日あたりまで飾ってきた。 (…

江須崎の博物誌

前回の橋杭岩に続いて、串本海中公園のレストランで昼食をとり、その後すさみ町の江須崎へ行った。ここでは、植物群落として国の天然記念物に指定されていることが強調されて、地質のことは、ほとんど説明されなかった。それで、〈石ころ百話〉としては〈番…

富嶽三十六景の遠近法と隣接関係

某生物学者の富嶽三十六景の解説に刺激されて、富士山に関する〈隣接関係〉を論じて来た。富嶽三十六景の解説ページを検索していると、北斎が遠近法を駆使していたという解説がいくつものサイトで見つかる。遠近法の意味については、まだ完全には理解できて…

富士山の記号論的分析

先に「富嶽三十六景と隣接関係」という文章を書いたときは、ちょうど富士山の世界遺産登録が決定したときだったから、多くの人が読みに来てくれるのでは?と期待したのだが、ほとんど読まれていないようだ。私のサイトは、特定の人を除けば、検索で引っかか…

富嶽三十六景と隣接関係

数日前の朝刊(2013/06/20)で、大学かなにかの宣伝ページで、某有名生物学者が、葛飾北斎の富嶽三十六景のうちの「尾州不二見原」という絵を取り上げていた。桶の中から、富士山を見るという構図が、レンズを介して見ることのアナロジーとして、述べられて…

秋津野みかん資料館

田辺市の秋津野ガルテンにある「秋津野みかん教室『からたち』」に行って来た。秋津野ガルテンは、古い木造校舎を再活用した施設で、レストランや体験教室や宿泊施設などをやっている。レストランは、地元農家からの野菜を中心としたバイキング料理で、何度…

チョウ二種と曖昧擬態:ヒメウラナミジャノメ、モンキアゲハ

●ヒメウラナミジャノメ このチョウを見たときに、久しぶりに見慣れない種類を見つけたと思った。目玉模様があるからジャノメチョウかと思ったが、シジミチョウを少し大きくした程度なので、どちらかだろうと思いながら写真に撮った。 (2012/07/24 撮影) い…

個物と個物の関係としての隣接関係

隣接関係というと、個物と個物の関係だと思っていた。ところが、『「ぼくはウナギだ」(ウナギ文)は、シネクドキだ 3』でのコメントのやり取りで、必ずしもすべての人がそのように受け取っていないことに気がついた。その記事で引用した今田水穂氏の「日本…

シネクドキ(提喩)とメタファー(隠喩)の区別

「メタファー分類へのパースの三項図式の適用」で、シネクドキがメタファーとしばしば混同されることについて触れた。そのときに、シネクドキは、実はメタファーの片割れではないかといったことを示唆した。そのことの意味を考えてみたい。ちょうど、森雄一…

「隠喩の二重提喩論」再考

「メタファー分類へのパースの三項図式の適用」の続きとして、以下の論文を取り上げてみたい。内海 彰 (2008). グループμの「隠喩の二重提喩論」再考 −(二段階)カテゴリー化理論との関係−, 日本認知科学会「文学と認知・コンピュータ研究分科会II」第15回…

役割と値とシネクドキ

前回引用した今田水穂(2009)「日本語名詞述語文の意味論的・機能論的分析」の論文にある「役割と値」について触れたい。役割と値というのは、Fauconnier (1985) によるものらしい。その本を実際に手に入れて読むかどうかは、少し考慮中であるが、現時点で今…

「ぼくはウナギだ」(ウナギ文)は、シネクドキだ 3

次に出会ったのが、以下の学位論文であった。今田水穂(2009)「日本語名詞述語文の意味論的・機能論的分析」。この論文は、分量からして、かなり包括的な議論をしているものと想像される。しかし、なにしろ長いので、全部は読んでいない。また全体の論理構成…

「ぼくはウナギだ」(ウナギ文)は、シネクドキだ 2

前回触れたように、ウナギ文について考える過程で、ネットで読むことが出来る論文をいくつか読んだ。それについて、触れてみたい。まず最初に見つけたのが、山本幸一(2006)『「ウナギ文」の分析 − 連結メトニミーとして』という文章だった。「ウナギ文 メト…

「ぼくはウナギだ」(ウナギ文)は、シネクドキだ 1

パースの記号論で、命題のことを勉強していて、copula について学ぼうと思って、日本語での議論を検索していたら、「ウナギ文」に関する議論があることを知った。それで、ネットで読むことが出来る関連論文をいくつか読んだ。この文章では、「ぼくはウナギだ…

メタファー分類へのパースの三項図式の適用

先に「パースの三項図式によるレトリックの解釈」で概要を述べたことを、実際のメタファーに適用してみたい。 メタファーが、何らかの喩えるもの(喩辞)で、何らかの喩えられるもの(被喩辞)を表現することであるとするならば、上の図のようにパースの三角…

「坊っちゃん」の登場人物とレトリック

今年のはじめに、メトニミーやメタファーの実例を調べようとして、夏目漱石の「坊っちゃん」の登場人物のことを青空文庫で調べていたら、、結局全部読んでしまった。これまでに何回読んだか覚えていないが、年をとったせいか、単なる痛快物語ではなく登場人…

瀬戸賢一「メタファーと多義語の記述」から

先の「メタファーの分類(改訂版)」のことを考えていて、「メタファー研究の最前線」という本の中の瀬戸賢一「メタファーと多義語の記述」という論文で、いろいろ興味深い記述を見つけた。この本の元になったシンポジウムのハンドアウトは、こちらの PDF で…

パースの三項図式によるレトリックの解釈

先の「メタファーの分類(改訂版)」で示した図式を、パースの三項図式(記号−対象−解釈内容)によって、解釈してみたい。パースの思想全体を理解しているとはとても思っていないので、今後も変更があるかも知れませんが、まずは試論として、読んでみてくだ…

共感覚メタファー

昨年の年末に、京都大学霊長類研究所の研究で、「チンパンジーにも「黄色い」声!?」という記事が、新聞に載っていた。視覚情報の特定の特徴(eg. 色)と特定の音声の特徴(eg. 音の高さ)の間での対応付けが、チンパンジーでもおこなわれているということ…

メタファーの分類(改訂版)

先に「認識の三角形とパースの記号論」で、メタファーを3つに分けることに触れた。そのことにどれだけのオリジナリティがあるのかはよくわからないので、これから考えていくことになるが、まずはこれまでに述べたことの概要を述べて、アイデアのプライオリ…

ヒメアカタテハと擬態

ヒメアカタテハについては、この路傍百種を始めたかなり初期の頃に取り上げた。そのときには、ツマグロヒョウモンと比べて、違う模様のチョウを識別したということで、名前を調べてお終いだった。 (2011/10/01 撮影)この写真を撮ってから少し経ったのだが…

パースの hypoicon

パースの用語で、アイコンに関連する用語として hypoicon (低類似記号)という単語がある。この単語自体は、検索してみてもあまり多くはヒットはしないようなのだが、それが3つに区分されることは、多くの人が触れている。つまりイメージとダイアグラムと…

認識の三角形とパースの記号論

以前に、「シネクドキ(提喩)の位置づけ」で、瀬戸賢一の“認識の三角形”を示した。また、「認識の三角形に立ち戻って」では、同氏の「認識のレトリック」を読んだ感想として、メトニミーとシネクドキに対応するかたちで、メタファーaやメタファーbなどが…

博物館のレプリカと、芸術品の贋作

先に、「いつ贋作か――贋作の記号学メモ」の感想という記事を書いた。このようなことに興味を持ち始めたのは、博物館のレプリカのことを考えたことがきっかけであるから、美術館(これも広義の博物館だろう)における贋作のことを対比して考えてみると、なか…