2008-01-01から1年間の記事一覧

生物の学名は、なぜイタリックで書くのか?

生物学を学び始めた最初の頃に、生物の学名はイタリック(斜体)で書くものだと教えられた記憶がある。イタリックで示せないときには下線を引くということもそのときに学んだように思う。大昔のタイプライターの時代から、ワープロになったり、今のパソコン…

トークンとしての種タクソン

先の「カテゴリーとしての種、タクソンとしての種」という記事に、「系統樹思考の世界」の著者である三中さん本人がトラックバックをつけてくれたので、改めて少し考えてみた。 ※ 「カテゴリーとしての種、タクソンとしての種」という記事.集合としてのカテ…

日本の原風景と季節

徳島県立博物館へ行った日に、その下の会場(二十一世紀館というらしい)で、「日本の原風景と季節」という展覧会をやっていた。放送大学附属図書館所蔵コレクション展ということらしいのだが、古写真とちりめん本の展示がされていた。ちりめん本というのは…

徳島県立博物館

先日の12月12日に、徳島へ行くことがあったので、ついでに徳島県立博物館へ行ってきた。「文化の森」という場所の一角を占めていて、徳島県の規模からすれば、かなり大きな博物館に思えた。開館は1990年とのことだから、ちょうどバブル時代の頃の設計なのだ…

アロタイプについて

昔、ある動物の新種を記載したときに、アロタイプを指定したのだが、そのときに「アロタイプはパラタイプの一部であるから、ホロタイプ、アロタイプ、パラタイプと並列することはおかしい。パラタイプの一部であることがわかるように指示するべきである」と…

命名規約について

学名に関する規則を書いたものが、命名規約であり、動物に関する「国際動物命名規約」は、日本語版も出ている(日本動物分類学会:「国際動物命名規約」)。かねてより、命名規約について、自分なりに勉強したこと、疑問に思ったことを書き残しておきたいと…

生物の名前はなにを指示しているか

生物の学名(例えばヒトの Homo sapiens という学名)はなにを指し示しているか? と問われたときに、「種の全体(ヒトというタクソン全体)」を指すと考えることは、それほど突飛なことではないだろう。種が集団であると考えることは、生物学の中でごく普通…

動物分類学30講

タイポロジカルな例として「動物分類学30講」という本を取り上げたい。この本は、まさに日本を代表する分類学者が書いた教科書で、非常に重要な項目やテーマが多数取り上げられているのだが、あまりにも大胆な断定やら、間違いやらで、つっこみどころ満載…

タイポロジカルということ

生物の分類学者に対して、タイポロジカル(typological)だと評することは、かなりヒドイ侮蔑の言葉だろう。タイポロジカルだと居直っている人でない限りは、自分はタイポロジカルではないと弁明するに違いない。生物でいうタイポロジカルとは、なにか典型や…

ぶつぶつ川のこと

先月末頃に、「ぶつぶつ川」という川が日本で一番短い二級河川だということが話題になっていた。実は、数年前にこの川を見に行ったことがある。そのときには、今ほど有名ではなかったのか、少し離れた郵便局で訊いたものの、何人かに尋ねまわって初めて場所…

カテゴリーとしての種、タクソンとしての種

生物の種を議論するときに、「種」という言葉には、カテゴリーとしての意味(種カテゴリー)と、タクソンとしての意味(種タクソン)があるとよく言われるのだが、必ずしもよく理解されているとはいえないようだ。このあたりの区別を、先に述べた「タイプと…

タイプとトークン

先に、地球は歴史的存在だと書いた後で思い出したのだが、三中信宏(2006)「系統樹思考の世界」という本に、歴史の見方について似たような考え方が、もっと明確な形で載っている。三中さんの本や論文などは何度か読んだことがあるので、彼の紹介した考え方…

トキについて

9月の末頃に、トキを“野生に戻す”とのことで、トキのことが話題になっていた。かねてより、中国のトキを連れて来て、それを日本に放すことに、どのような意味があるのか疑問に思っていたので、あれこれ考えてみた。このようなことを考えるのも、「生物と地…

大阪府立弥生文化博物館の「鉄道発掘物語」

「一本足の蛸」というブログで、弥生博物館の夏季企画展に「鉄道発掘物語」というものが行われていることを知った。和歌山電鉄のことを展示に取り上げることについて、以下のように書かれているが、まったく同感である。 言うまでもなく、大阪府下の鉄道では…

イルカショーはサーカス

ある水族館関係者と話していて、「イルカショーはサーカスだ」という説明に、ひどく同感したので、このことの意味について少し考えてみたい。かねてより、水族館のイルカショーについて、不思議に思っていた。クジラ類に思い入れの強いグリーンピースならず…

ダーウィン展

先の週末(8月17日)に大阪自然史博物館でやっているダーウィン展に行って来た。なによりも驚いたことは、入場者数の多さだった。9時30分の開場前に行ったのだが、その時点で入場待ちの人が何十人かはいて、さらに入り口のところには、行列用にコーンの通…

海というもの

海というものは、改めて考えてみると、不思議な存在だ。世界の海はつながっていて、ひとつだとも言えるし、世界各地で、環境も生物相も違っているとも言える。このところ考えている歴史的存在ということからすれば、地球の誕生以降、地球が冷えて、水が溜ま…

生物と地球の対比

地球と生物を比べること自体、不思議に思う人がいるかもしれない。私自身も、生物も地球も歴史的存在だとは思ってはいたが、両者の違いについて深く考えたことはなかった。また、歴史的存在ということでは、たぶん哲学的にはいろいろな定義があるのだろうけ…

夏休み子ども科学電話相談:海の水はなぜ塩辛い

(2011/08/21 追記):少し前に、Google Analytics をセットしてみたら、このブログの記事の中で、このページが一番よく読まれていることに気がついた。おそらくちょうど夏休み中に重なったこともあるのだろうが、いろいろな検索サイトからこのページにたど…

博物館とレプリカ3:飲食店の食品見本

この前の日曜日に、NHK の「ルソンの壺」という番組をたまたま見ていたら、「いわさき」という飲食店用の食品見本の製作会社が紹介されていた。これはまさに、先に「博物館とレプリカ2:いろいろなレプリカ - ebikusuの博物誌」で触れた、いろいろなレプリ…

坪井清足さんと大阪府博物館

先週末の朝日新聞で、考古学者の坪井清足さんが大阪府の博物館について語っているインタービュー記事が載っていた。ネットで検索してみたのだが見つからないので、紙面でしか読めないようだ。それで、ブログなどで触れられているのも、ごくわずかのようだ。…

「なんでやねん?」という問い

フェルミ推定のことを考えていて、ある尊敬する生物学者が言っていた「研究とは?」ということを思い出した。研究の過程は、以下の3つの段階から成り立っているというものである。なんやろか − なんでやねん − ほんまかいな これらの各段階については、いろ…

13歳のハローワーク2:オーケストラ団員

先に述べた「13歳のハローワーク」のサイトに、オーケストラ団員という文章がある。 交響楽団に所属するクラシック演奏家のこと。ただし、交響楽団はそれほど多くの楽団員を募集しているわけではなく、たとえ音楽大学を出ても、交響楽団に入るのは簡単ではな…

13歳のハローワーク

先のフェルミ推定で、ピアノ調律師の数のことを“考察”したので、他の職業について調べていて、「13歳のハローワーク」の公式サイトを見つけた。本の方(Amazon.co.jp: 13歳のハローワーク: 村上 龍)は、前にベストセラーになっているのは聞いたことがある…

フェルミ推定

「フェルミ推定」に関する本が話題になっているらしい。こんなに話題になってしまうと、ブックオフあたりで100円で売るようになるまでは買わないと思うが、インターネット上の記事から、ある程度の内容は想像しながら、あれこれ考えた。Amazon.co.jp: 地頭…

磯観察会でウニを食べること

先日、高校生の野外実習の磯観察につきあう機会があった。そのときに、高校生が、採集したウニを食べている場面に出くわした。やめるように注意をするべきか、貴重な体験として認めるべきか、非常に戸惑ったので、その後に考えたことを書き留めておきたい。…

大阪ミュージアム構想3

たまたま「大阪ミュージアム構想」で検索をかけていたら、大阪府のメールマガジンで、大阪ミュージアムの構想を書いているものが見つかった。 今日の記者会見で、「大阪ミュージアム構想」について話をしました。今、大阪 に必要なものは、“まちの空気感”“ま…

大阪府立博物館と橋下知事5:このところの橋下知事の動向

橋下知事のことでいちいち反論するのも、そろそろバカらしくなってきたのだが、最近のことで少し感想を。『府内の名所を芸術作品に見立てて、府を一つの博物館としてアピールする「大阪ミュージアム構想」の推進に2200万円を支出』するらしい。一方で、…

大阪ミュージアム構想2

橋下知事が、千早赤坂村の棚田を訪れたらしい。先に、「まずは現地へ行って、眺めてみるべきだ」と述べたことからすれば、なかなか好ましいものと思ったのだが、その日程をよく調べてみると、なんのことはない、たかだか20分ほどで周囲を一瞥したのに過ぎ…

大阪ミュージアム構想

橋下知事がやることなすことなんでも反論を述べたくなるのだが、大阪ミュージアム構想で、大阪府全体を博物館と見立てることは、悪くはないと思う。ただし、ライトアップすることではなくて、多くの名所の価値を再認識することである。新聞で挙がっていたの…