大阪府立博物館と橋下知事5:このところの橋下知事の動向

橋下知事のことでいちいち反論するのも、そろそろバカらしくなってきたのだが、最近のことで少し感想を。

『府内の名所を芸術作品に見立てて、府を一つの博物館としてアピールする「大阪ミュージアム構想」の推進に2200万円を支出』するらしい。一方で、『御堂筋などを電飾する「冬季イルミネーション・イベント」は当初、最大20億円と見込まれていたが、試験実施としたため8900万円に抑えた』ということらしい。

これで、大阪ミュージアム構想のケチ臭さが見えてくるようだ。草の根の運動だったら2200万円は大きいだろうが、府が主導するのでは、なんとか審議会でもつくって、パンフレットでもつくったらおしまいではないか。

かつて触れたことがある「大阪みどりの百選」のように、なんの意味かもわからないような石碑や看板などを残して終わるのだろうか。


「お笑いが大阪文化の基本」という発言も、よく言うよなあという感じ

センチュリー響への補助金全廃で知事
 橋下知事は30日の生活文化部との公開議論で、PT試案で補助金全廃が打ち出された大阪センチュリー交響楽団豊中市)に関連し、「行政や財界は、ちょっとインテリぶってオーケストラとか美術館(が大事)だとか言いますが、大阪はお笑いの方が根付いているというのが素朴な感覚」と述べた。

 同楽団が府民に根付いていないと指摘する中での発言。同部の幹部は「大阪の貴重な財産として下支えすることは必要」と反論したが、橋下知事は「お笑いが大阪の文化の基本。タレントは一生懸命、競争し、お笑いの文化を広げている。大阪に根付いていないのにクラシック(が大事)というのは、行政が一人で踊っているようなものだ」とまくし立てた。

(2008年05月31日 読売新聞)


ワッハを移転するとか、劇場部門を廃止するとか言っていながら、よくもまあこういう発言ができるものだ。

クラシックについては、おそらく生の演奏を聴いたことがないのだろう。美術館にも行ったことがないのだろう。自分が知らないことをタナに上げて、大阪文化の基本だの、根付いていないだのとのイチャモンをつけるようなことは、かなり恥ずかしいことだと思うのだが。

橋下は権威に弱そうだから、世界の小澤征爾でも、中村絋子でも、大阪出身の西本智実でも、誰でもいいから、演奏会にでも招待して、ちょっと一言声をかけてやれば、クラシックに対する認識を改めるかも。


その他にも、児童文学館が廃止される見込みだという。5月30日に行われた各部局との公開議論では以下のようなことを言ったらしい。

国際児童文学館
 来年度廃止

 (府教委)移転は良いが、子どもに良い図書を選定するなどの研究機能は存続を。

 (知事)本当に府の予算で行うべき研究なのか。いったん廃止して、必要なら再度行えば良い。


これで大阪府は、今まで引き継いできたすばらしい宝物をまた失うことになるのだろう。たぶん児童文学というものは特殊な分野で、府立図書館に統合してもうまくいかないだろうし、研究機能も廃止では、まともなコレクションにならないだろう。「必要なら再度行えば良い」などと言いつつ、何年かのギャップは取り返しのつかないものとなり、結局は、途切れてしまったコレクションとなって、資料の価値がわかる人がいないでは、お荷物になるのがオチだろう。


博物館や文化のことで、大転換が行われようとしていて、多くの異論が噴き出しているのに、いろいろなことがトップダウンで勝手に決まって行っている。何年か経ってみたときに、この時期の決定を「負の遺産」として振り返ることになるのだろうなあ。