坪井清足さんと大阪府博物館

先週末の朝日新聞で、考古学者の坪井清足さんが大阪府の博物館について語っているインタービュー記事が載っていた。ネットで検索してみたのだが見つからないので、紙面でしか読めないようだ。それで、ブログなどで触れられているのも、ごくわずかのようだ。

ごもっともだが…:はくぶつかん屋:So-net blog
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Doblog - きょうちゃん 朝 起きたら太陽を拝み ふらふらせん と やらにゃ〜 日が暮れたら寝せい -


この記事のことを教えてくれた妻によれば、日頃、私が主張しているのと同じようなことを、エライ人が言っているとのことだった。たしかに、弥生博物館や近つ飛鳥博物館の展示方針がいかにバカげているかは、このブログでも何度か主張してきたことだが、そうなってしまった事情の一端を、坪井さんなりの語り口で説明してくれていた。でも、文化に理解のない橋下知事によって、目の前で博物館がつぶされかかっているときに、どこか焦点のぼけた記事になっていた。「はくぶつかん屋」さんのブログでも述べておられるように、「聞き手であり、記事を構成した記者の問題」だと思えてくる。

せっかく老大家から意見を訊くのに、どうやって客を集めるだの資金を集めるだの展示の手法だの細かいことを訊いてなんになるのか。むしろ、文化についての見識なり、ご本人が関わられた博物館の成功例や理想例などについて、大所高所からの意見を訊くべきだろう。

インタビューをした小滝ちひろという記者は編集委員という肩書きらしいが、文化に対して妙に情報通ぶって、自分なりの勝手な博物館のイメージをつくりあげているのか、却って、今の大阪府の博物館のことが見えていないようだ。今の大阪府の博物館でやるべきことは、トップダウンでやめる・やめないと決めることをまず中断させることではないのか。そして、現場の学芸員がどのような方向性を目指すのかをボトムアップさせるべきである。そのような姿勢で、御大の意見に耳を傾ければ、「文化というのは金がかかるもんだ」とか、博物館にとってなにが大事で、「人は入らへん」でも「残すべきものはある」とかの意見が、もっと切実に聞こえてくるだろうに。

大阪府の博物館のバカげているところは、このブログで何度も述べて来たように、なんでもかんでも盛り込んで、本来の大事にするべき“本物”を見失っていることである。その計画の過程で、歴代の知事やら府会議員やら府の官僚やらが、あれこれ口出ししたのだろうことは、坪井さんのインタビューからも読み取れる。そのような人たちの責任を問わずして、今のスタッフにだけ努力を求めるのは間違っている。なによりも、その博物館の守るべき“本物”を知っているのは、学芸員を置いて他にはないのだから、その人たちがやる気にならなくして、本当の意味での改善にはならないだろう。

橋下知事が就任以来やっていることは、予算を減らすだの、給料を減らすだの、博物館の現場のやる気をなくさせることばかりである。その一方で、大阪ミュージアム構想などという行き当たりばったりなことを打ち出している。今年度は、博物館は存続することになりそうなのだが、このようなやりかたを唯々諾々と聞いているようでは、大阪城の攻防のように、外堀も内堀も埋められて、結局は落城・壊滅ということになりかねないだろう。

まあ、そういう大阪府知事の姿勢を、大阪府民も朝日新聞も支持をしているというのなら、仕方がないのだけれど……。