博物館とレプリカ3:飲食店の食品見本

この前の日曜日に、NHK の「ルソンの壺」という番組をたまたま見ていたら、「いわさき」という飲食店用の食品見本の製作会社が紹介されていた。これはまさに、先に「博物館とレプリカ2:いろいろなレプリカ - ebikusuの博物誌」で触れた、いろいろなレプリカのひとつだろう。

本物よりもおいしそうに見えるものを作っているということをウリにしていたのだが、その社長が食品見本(=レプリカ)の目的は?と訊かれて、「お客さんを店に引き込むこと」「お客さんに語りかけること」といったことを淡々と語っていた。

食堂の陳列ケースの見本を見て、誰も本物だとは思わないだろう。むしろ、誇大表示で、実物の料理の方は貧弱かも知れないのだが、そうだとわかっていても、いろいろなメニュー品目を比較して、本物を食べてみたいと思わせるものが、食品見本の存在理由なのだろう。

飲食店にとっては、食品見本を使う理由は、以上のように割り切ったものだろう。一方、レプリカを礼賛する博物館の人はどう考えているのだろうか? 見てもらいたい本物があってこそのレプリカになっているだろうか。いくら情報量は同じだと言い張ったところで、レプリカだけがずらりと並んでいるところで、鑑賞意欲は満たされないだろう。食堂街のウィンドウを眺めただけで、食欲を満たせと言っているようなものだろう。