命名規約

ミカンの分類学

ミカンをシリーズとして取り上げ始めたときに、疑問に思ったことのうち、前回は〈ミカンの解剖学〉を取り上げたので、今回はミカンにおける生物学的な〈種〉について取り上げる。実は、これまでいろいろなミカンを取り上げたのだが、その学名を示さないで来…

イセリアカイガラムシ(有翅成虫)

こういう三角形の形をした虫は、なんの仲間かもわからなくて、同定が難しいんだろうなと思いながら写真に撮った。ガとも思えるし、ハエの仲間とも思えるが、たまたまベニモンアオリンガのことを調べているときに、アオバハゴロモを見ていて、ヨコバイ亜目の…

ヒトのタイプ標本3:タイプ標本の機能

前に、G.G. Simpson の本を引用したが、同書に、タイプ標本の機能として、3つの項目が挙げられている(英語版なら p183 訳本では p199)。 1) as the sole or principal basis for the description and definition of taxa (primarily of species)2) as a s…

ヒトのタイプ標本2:化石人類のタイプ標本

昨日の記事で、ヒト(Homo sapiens)という種類には、タイプ標本がないことを示したのだが、化石の Homo 属の種類では、タイプ標本が揃っているようだ。例えば、このページの「ホモ属の種内変異と種間関係」という記事では、ネアンデルタール人からホモ・エ…

ヒトのタイプ標本

ネオタイプのことが出たついでに、ヒト(Homo sapiens)のタイプ標本について、私にとってわかっていることを、メモに残しておきたい。実は、この話は、先にネアンデルタール人のこと(ネアンデルタール人の謎 - ebikusuの博物誌)を書いた後に、調べ始めた…

ネオタイプについて

先日、ある雑誌の編集会議で、投稿されてきた論文中にネオタイプが指定されていて、そのことを認めるかどうかの議論になった。私にとっては、ネオタイプを指定するということはものすごく敷居の高い行為だと思っていたから、そんなに簡単に、しかも必ずしも…

生物の命名とレトリック

先にメタファー・メトニミー・シネクドキなどについて考えてみると、生物(個体であったり、タクソンであったり)に命名することこそ、レトリックであると思えて来た。おそらく、このようなことは既に誰かが考えていることかも知れないが、差し当たっては、…

「生物の樹・科学の樹」の感想3:シネクドキと分類群の名称

連載の6回目のところで、メトニミーとメタファーを述べた終わりの方で、シネクドキ(シネクドーク)について触れている。 「お花見」の“花”が実は“桜”を指し、「卵焼き」の“卵”が“鶏卵”を意味するように、ある集合(タイプ type)とそのメンバー(トークン …

生物の学名は、なぜイタリックで書くのか?

生物学を学び始めた最初の頃に、生物の学名はイタリック(斜体)で書くものだと教えられた記憶がある。イタリックで示せないときには下線を引くということもそのときに学んだように思う。大昔のタイプライターの時代から、ワープロになったり、今のパソコン…

アロタイプについて

昔、ある動物の新種を記載したときに、アロタイプを指定したのだが、そのときに「アロタイプはパラタイプの一部であるから、ホロタイプ、アロタイプ、パラタイプと並列することはおかしい。パラタイプの一部であることがわかるように指示するべきである」と…

命名規約について

学名に関する規則を書いたものが、命名規約であり、動物に関する「国際動物命名規約」は、日本語版も出ている(日本動物分類学会:「国際動物命名規約」)。かねてより、命名規約について、自分なりに勉強したこと、疑問に思ったことを書き残しておきたいと…

自然博物館における標本の意義:タイプ標本

タイプ標本は、新種を発表するときに基づいたものであり、その永久保存が国際的な命名規約に定めてあるから、国際的にも科学的にも文句なしに重要な標本と見なされている。しかし、命名規約自体は、法律の条文集のようなものであり、少々読んだくらいでは歯…