博物誌

「いつ贋作か――贋作の記号学メモ」の感想

いつも勉強させてもらっている「現在思想のために」というブログで、「いつ贋作か――贋作の記号学メモ」という一連の記事が目についた。おそらく、この記事は以前にも読んだ気がするのだが、少し前に「パースのレプリカと博物館のレプリカ」という記事を書い…

「パースの記号分類」をいくつかの例に適用

先に、パースの記号の十のクラスについて触れたので、実際の例でどのようにあてはまるのかを考えている。ここでは、前にも取り上げた菅野氏の「現在思想のために」というブログにある「『記号の分類学』から『記号機能分析』」という記事で扱われたものを、…

忠犬ハチ公の剥製の色

「博物館 レプリカ」で検索をしていると、非常に興味深いホームページを見つけた。ハチ公クラブの「博物館の怠慢」という記事なのだが、国立博物館の忠犬ハチ公の剥製の色が、経年変化で白くなってしまっているが、本来の秋田犬の色からしても、またおそらく…

パースのレプリカと博物館のレプリカ

パースの記号論では、legisign は、sinsign をレプリカとして持つことになっている。つまり、legisign は、一般的なアイデアや規範や法則や習慣などであるから、それを具体化して表現するためには、sinsign としての実例が必要だということなのだろう。レプ…

パースの記号学による生物種の解釈

だいぶ前に、トークンとタイプの区別にからめて「カテゴリーとしての種、タクソンとしての種」を論じたことがあった。当時は、一昨日も書いたように、トークンという単語を使いたかっただけなので、パースの議論との関わりは意識していなかった。生物種のこ…

パースの思想のつまみ食いからの脱却

過去の記事を読み返していると、これまでパースの思想に関することを、いろいろ取り上げて来たようだ。例えば、「タイプとトークン」、 「アイコン・インデックス・シンボルとレトリックとの対応」、「アブダクションについて 井崎正敏 (2008)「“考える”とは…

神島

ある調査に同行させてもらって、南方熊楠ゆかりの田辺湾神島に6月29日に行って来ました。この島は国指定の天然記念物で事前に田辺市などから許可をもらわないと上陸できません。この島に対する南方熊楠の思い入れは大変なもので、その島へ足を踏み入れるこ…

写真と俳句

少し前に、コメント欄で、まつべぇ〜さんから写真俳句について紹介していただいたことがあった。そのときには、俳句も写真も、全体から部分を切り取るメトニミーであることを強調したのだが、改めて、写真と俳句の関係を考えてみると、実に興味深い。 まず、…

「初発のアイコンはインデックスでもある」の感想

「現在思想のために」というブログでは、菅野氏自身、同じような問題を繰り返し述べられているのだろうとは思うが、ここでは、「初発のアイコンはインデックスでもある」という記事を読んでいろいろ考えたことを、まずは論じたい。この記事で、菅野さんは、…

アイコン・インデックス・シンボルとレトリックとの対応

かなり以前に「♂♀の記号の意味」という文章を書いたときに、パースによる記号の分類として「アイコン・インデックス・シンボル」について触れたことがある。そのときは、富山商船高専の言語学者である金川欣二さんの『フェイスマークの図像学 (^_^;』の引き…

俳句における主観と客観

前回、朝日新聞の「俳句 師を選ぶ」のことを触れたときに、少し前に「俳句とレトリック(付け足し)」で触れた「現在思想のために」というブログで、「俳句の世界制作法 ノート」の一連の文章を精読していた。新聞の記事で、現在俳句のいろいろな流派のこと…

朝日新聞の「俳句 師を選ぶ」

5月末に俳句のことを書いたと思ったら、これまたシンクロニシティか、6月の初めから朝日新聞の「ニッポン人脈記」という記事で、「俳句 師を選ぶ」というシリーズが始まった。俳句界のことも、具体的な人物のこともほとんど知らないのだが、俳句の濃密な師…

脳とレトリック

4月に同じ職場の人が、軽い脳梗塞になった。幸いなことに、ほとんど運動機能に障害は起こらなかったのだが、言葉の方が少し元の状態には戻っていないようである。それで、脳の機能についてネットで調べてみると、左右の大脳半球で大きく異なっているらしい…

俳句とレトリック(付け足し)

俳句とレトリックのことで検索していると、「春雨やものがたり行く蓑と傘 (蕪村)」という句が出てくる。この句は、佐藤信夫の「レトリック感覚」でも触れられている。そこでは、細かな説明はされていないが、その前の文脈で、芥川龍之介の「羅生門」の「女…

俳句と和歌で、地震を詠むこと

俳句のことを考え始めるきっかけになったのは、4月の半ば頃に、朝日新聞の朝日歌壇を見たことだった。地震や原発の事故から1ヶ月ほどが経って、和歌や俳句でどのように先の地震が詠まれているか、ちょっと興味を持った。そのときに、自分でも大発見だ!と…

俳句とレトリック

やりかけのことがいっぱいあって、レトリックのことを考えるのは封印していたのだが、ゴールデンウィーク中に考えたことを、少し書いてみたい。俳句がメトニミー的な連鎖から成り立っていることを、レトリックのことを学び始めたときにどこかで読んだ気がす…

原発事故と敗戦と公害と

前に「人と生き物48講」という本を紹介することで、奥野良之助さんのことに少し触れた。大きな事件が起こると、今でも、奥野さんの意見を聞いてみたくなる。特に今回の原発事故のような場合には、いつも送ってくれていた「粉河通信」で、エライ人たちの醜態…

原発について

3月末に地震のことを書いてから、4月も終わろうとしている。原発についても、なにかを書かずにはいられない。原発の情勢は、未だ定まらず、今後何が起こるのか予測もつかないのだが、それでも、今の自分の気持ちを残しておきたい。 私の人生の中で、原発や…

地震のこと

今日で3月も終わりである。前にブログを書いたのが2月の上旬だったから、2ヶ月近くが空いてしまったことになる。この間、3月11日に地震があって、その後の原発事故があった。このブログは、私自身の勝手な思い込みや自然観察を書いているようなものだが…

京都梅小路の水族館4

梅小路の水族館について、いろいろな情報を拾い出して来たので、最後に、私の見解を述べておきたい。私は、もちろんこの水族館に反対である。反対する論点は、いくらでも思いついて、どこから書いてよいか困るほどである。それで、こちらの「写真少年漂流記…

京都梅小路の水族館3

「京都水族館(仮称)と梅小路公園の未来を考える会」のサイトでは、いろいろなシンポジウムの報告書を読むことができる。その中で、2010年9月の第2回シンポジウムでは、川那部浩哉京都大名誉教授に、幸島司郎京都大学教授が講演者やパネリストとして発言…

京都梅小路の水族館2

先に「京都梅小路の水族館1」で書いたことや、インターネット上の情報をすりあわせて行くと、この水族館の計画は、いかにも不気味なものに思えてくる。実際のところ「梅小路 水族館」で検索してみると、反対意見がズラリと並んで出てくる。そんな中で、着工…

京都梅小路の水族館1

名古屋港のシャチのことを調べていたら、京都に水族館が計画されていることを知った。ウカツにも、多くの人が反対していたらしいのだが、こういう計画があること自体をまったく知らなかった。しかも、そういう反対の声があるにもかかわらず、既に工事にとり…

名古屋港水族館のシャチ

2週間ほど前の1月14日に、名古屋港水族館でシャチが死んだらしい。昨年、太地の水族館と、高額(5億円)で取引されることが話題になっていたときから、もしうまく行かなかったらどうするのだろうかと、少し心配していたのが、最悪の展開(水族館にとって…

左と右5

坂本賢三(1982)『「分ける」こと「わかる」こと』講談社新書(今は、講談社学術文庫に入っているらしい)を読み返していると、ピタゴラスが10種の対を挙げているらしい。つまり、有限と無限、奇数と偶数、一と多、右と左、男と女、静と動、直と曲、光と闇、…

左と右4:奥野良之助「人と生き物48講」

左と右というような、対立するような項目について考えるときに、奥野良之助さんの「人と生き物48講」をよく読み返す。元の文章は1960年代の後半から1970年にかけて、その当時のタウン誌に書かれたものだから、取り上げられている話題については、遠い昔の話…

左と右3:左ヒラメに右カレイ

「左ヒラメに右カレイ」という言葉がある。この言葉自体は、左とヒラメで冒頭の音が対応しているから、覚えやすいものだろう。ところが、いざ口にしたときに、ヒラメの何が左に、カレイの何が右に対応しているのだろうか。さらに、実物を前にしたときに、こ…

左と右2:動物のこと

先に述べたような左右の方向性を理解することに関して、私自身、“勘”が悪いとずっと思って来た。子供の頃から、左利きということもあって、多数派の人とは動きが違うこともあったし、私の両親も、右と左についてきちんと教えてくれなかったように思う。それ…

左と右

先に、フジの巻き方のところで、右巻き左巻きが問題になった。植物の蔓の巻き方について、日本の植物学の世界だけは、牧野富太郎の影響のためか、普通とは逆の呼び方をしていた時期があったらしい。もちろん、二つの巻き方を識別していることでは変りなく、…

フジの巻き方

牛馬童子のところの木に、フジが巻き付いていて、それが右巻きなのか左巻きなのかで、妻とちょっと議論になった。近くの立て札には以下のようになっている。 この春に、オカフジのことを書いていたときに、植物雑学事典のところを見ると、フジ(ノダフジ)は…