フジの巻き方

牛馬童子のところの木に、フジが巻き付いていて、それが右巻きなのか左巻きなのかで、妻とちょっと議論になった。近くの立て札には以下のようになっている。




この春に、オカフジのことを書いていたときに、植物雑学事典のところを見ると、フジ(ノダフジ)は左巻きで、ヤマフジ(オカフジ)は右巻きということで納得していた。今回の巻き方は左巻きだから、立て札の巻き方の説明はおかしいことになる。

ところが、妻は執拗に右巻きだと主張する。なにしろ妻は、元中学校の理科の教師だったから、右ねじの法則がどうだの、自信満々で主張する。上から見れば時計回りだとの主張らしい。もちろん、上から見るか、下から見るかで逆になる。

私が覚えているのは、巻貝の大部分が右巻き(dextral)であり、左巻き(sinistral)は非常に少ない。その右巻きであるということを判断するのに、殻頂から口の方を見て、つまり成長をする方向を見て、時計回りであることだと覚えていた。

ところが、帰って来て、いろいろなインターネットのサイトを見てみると、植物の場合はものすごく混乱しているようだ。なにしろ、植物の大御所の牧野富太郎が、私の思っていたことと逆のことを言っているらしい。Dextrorse という単語を、わざわざ「左巻き」と意訳しているらしい。

以下のサイトでは、そういう過去の経緯も踏まえて説明をされていて、ほぼ私の覚えていたことと一致するようだ。それでも、それぞれの言い分を理解しようとすると、頭の中がグチャグチャになってくる。

「つる植物の茎の右巻き左巻きからの脱却の提言」
「右巻き、左巻き - Wikipedia」
つる植物の右巻きと左巻き


特に、最後のサイトなどは、文部省・日本植物学会(1990)学術用語集植物学編を引用されて、牧野の方式が間違いであることを、“権威”をもって示してくれている。

それで、同じような辞典として、岩波の「生物学辞典(第4版)」を見てみると、左巻き(sinistral)の説明として、「生物体のらせん構造において,成長の方向を軸としそれを後から見たとき左回転を示す形態的な属性.その逆が右巻き(右旋dextral)」となっている。フムフム、私が覚えているとおりだ。ところがその次に、「ヤマフジは左,ノダフジは右」となっているではないか。あちゃー、辞典の執筆者は、実物を見てないな。あるいは、古い版の記述をそのまま拾ったのかも。


(2010/12/08 追記):
植物の巻き方については、今年の春にネジバナを取り上げたときにも考えたのだった。そのときにも、いろいろな論文などを読んでいるときに、左右がどうもしっくり理解できないところがあった。このような植物の世界での混乱が関係しているのかも知れない。来年、ネジバナを観察するときに、改めて考えてみたい。