ミカンの解剖学

ミカンをシリーズとして取り上げ始めたときに、すぐに疑問に思ったことが二つあった。一つはミカンにおける生物学的な〈種〉について、もう一つがミカンの〈解剖学〉についてであった。まず今回は、解剖学について取り上げる。

最初に疑問に思ったのは、外側の皮の部分、白い部分、それに袋について、どのような呼び方をするかだった。手頃な〈解剖図〉のようなものがネットのどこかにないかと探したのだが、意外と見つからなかった。

このページの図で、だいたいの部分の名称はわかる。皮については、外側から順番に、外果皮(フラベド)、中果皮アルベド)、内果皮(じょうのう)などと呼ぶらしい。flavedo というのは香りに関係し、albedo というのは白いことに関係する単語なのだろう。


ところが、「発生学的には果実は葉が変形して発生したものであり、フラベドと果肉部は葉の表と裏に相当し、アルベドは葉肉にあたります」という記述で、一気にわからなくなった。花が葉っぱの変形したものであるとすれば、その果実も葉っぱの変形であり、外果皮(フラベド)が表の面であり、内果皮(じょうのう)が葉っぱの裏面であることはわかる。わからないのは、内果皮の裏表(裏=葉肉つまりアルベドに面した側、表=外側)である。

果肉に当たる〈砂じょう〉は葉の裏に生えた毛に液汁がたまったものなのだという。そうすると、果肉に当たる部分は、葉の裏の外側に生えた毛ということであり、袋で囲まれた部分は、葉の裏側の表皮が反り返って包み込んだものになるのだろうか。

袋がそういうものだとすると、袋の外側の部分は、実は内果皮の裏(肉側)ということになるのだが、正しく理解出来ているだろうか?


このあたりのことは、いつも陸上植物の形態学を勉強させてもらっている福岡教育大学の「雌しべと心皮」のページを読んで、少しは理解できるようになった。

そのページによれば、雌しべの単位として、心皮[carpel]というものを考えるらしい。心皮の両側には、背束、腹束という維管束が走るらしい。そうすると、袋の底にある白いスジは、背束と呼ばれる維管束ということで納得できる。

そうすると、外果皮がどのようなつながりをしているのか、次に疑問に思えてくる。袋の数だけ心皮が合着している合生心皮だとして、外果皮は外側だけで融合していて、内果皮が袋を形成するところまでは入り込んでいないのだろうか?

まだまだ疑問はあるが、徐々に勉強して行きたい。


(2013/03/02 追記):〈キトロロギストXの記録〉というブログの中の「カンキツの果肉は花のどの組織ですか」という記事で、果肉(vesicle)が、表皮の毛を起源とすることが説明されている。古典的記載ということで、Penzig (1887)の図が引用されていて、フラベド・アルベド・内果皮と重なっていて、内果皮が反り返って、後に果肉になる毛の部分を包み込むところが示されている。

そこで説明に使われている〈小林みかん〉というのは、このブログで〈小林オレンジ〉として触れたものに関連すると思えるので、そちらの方に追記する。