チューリップ

4月になったので、また「路傍百種」を再開したい。自宅からは、これまでに 294種を取り上げた。昨年中になんとか300種を超えようとしたのだが、結局達成できなかった。さすがに春になると、まだまだ取り上げたい種類が次々に出てくるようだ。


春の初めに、まずはチューリップを取り上げたい。この路傍百種では、“雑草”でも畑の作物でも、なんでも興味を惹かれれば取り上げてきたのだが、園芸用の栽培種には冷淡だった。それというのも、単純にきれいなだけでは、あまり興味を惹かれることもなかったのだろう。

そんな中で、チューリップには、なぜか注目してきた。2007年の秋に、今の家に住み始めたときに、おそらく最初のうちに植えたのもチューリップだった。せいぜい、10球くらいを植えただけだったのが、次の年には、なにもないところに咲いて、非常に目立ったので、近所の人が「きれい」と言ってくれたものだった。それで、毎年少しずつ購入する球根を増やして、一昨年は50球くらい植えたと思うのだが、開花の時期がずれたりして、思い通りには咲いてくれなかった。

それで、今年はあまり力が入らずで、これまでの廃物利用で、小さくなった球根をごちゃ混ぜで植えたら、以下のように咲いた。一応、赤・白・黄色にはなっているようだ。



チューリップの球根を太らせるのは、なかなか難しいようで、新しい球根も、次の年には小さく分球してしまって、花も小さくなってしまう。

例によって、いつも調べさせてもらっている岡山理科大学の「植物雑学事典」を見ると、そのことが書いてあって、原産地が地中海沿岸東部から中央アジアで、冬は温暖多雨であり、夏は高温・乾燥する気候から、日本の気候に合っていないらしい。





ユリ科だということで、花が3の倍数になっているのだろう。花の中を覗くと、時に中が黒い色をしていてびっくりすることがある。なにか「腹黒い」ことをイメージしてしまうのだが、これも昆虫を引き寄せるのに関係しているのだろうか。

また、花びらが散ったときにいつも思うのは、めしべに立派な子房を持っていて、実が実りそうでいて、結局しおれてしまう。種子ができるような品種もあるのだろうか。

チューリップの学名は、Tulipa gesneriana L. ということで、種小名は16世紀の博物学コンラート・ゲスナーにちなむらしい。南方熊楠が「日本のゲスネルとならん」と言ったという学者なのだが、実のところまったく知らなかった。これも追々と調べて行きたい。



(2012/06/21 追記):
いつもなら、チューリップの花びらが落ちたら、球根を太らせようと、子房の部分を切り落としてしまうのだが、今年は球根の植え付けのときから、あまり力が入っていなかったので、放置していたら、全てではないが、何本かで子房が膨らんで来た。チューリップには種子が出来ないものとの思い込みがあったので、どうせ種子にはならないと思っていたら、妻がインターネットで種子がなることを調べてきた。それで実ったものが、以下の写真である。




(2012/06/17 撮影)

ユリ科だから当然なのかもしれないが、いかにもタカサゴユリの種子のようなものが詰まっている。これを蒔いて、花が咲くまでに3年から5年かかるらしい。品種改良などもタネでやるらしい。でも、そんな悠長なことは性に合わないし、元の花がどんな色であったかも特定していないので、結局、大部分のタネは、地面にばらまいて、それでおしまいとなった。来年小さな芽生えが出てくるだろうか。