サカマキガイ

庭の真ん中に水鉢をふたつ置いていて、その中に水草を入れて、この地方の珍しい種類やきれいな花でも咲かせようと思ったのだが、ロクに世話をしなくて、新しいものも採集して来ないので、特に興味を惹くような種類も出現しないままで来ていた。先週に台風が通過したときの雨で、水鉢の水が入れ替わって、水が澄んでいたためか、貝がいることに気がついた。





(2011/09/11 撮影)

写真に撮って眺めてみると、どうやらサカマキガイということらしい。周囲の庭は水もなくてカラカラになるから、たぶん水草を持ち込んだときに、混じって運びこまれて来たものと思われる。

サカマキガイという名前は、大学時代に淡水魚の実習で川へ行ったときに、流れが途切れた水たまりのようなところにいたのを、M先生から教えてもらったことを覚えている。そのときに、どういう説明をされたかよく覚えていないのだが、魚の専門家でありながら、ちっぽけな貝についても即座にいろいろ説明されたことで、改めてM先生に尊敬の念を抱いたことを思い出す。


2枚目の写真は、水面に浮いているものを撮った。貝の方から能動的に水面に浮くというのは、干潟の貝がフローティングするというのを思いだすが、むしろこのような習性は淡水の貝にこそふさわしいように思える。ある水たまりから別の水たまりへ移動することで、一気に子孫を増やすチャンスが生まれることだろう。写真を見ると、単に表面張力にトラップされたというよりは、なにか浮きのようなものを分泌しているようにも見える。

このような浮いたところの写真を誰かが撮っているかと「サカマキガイ 浮く」で検索してみたら、「水面を逆さまにはうサカマキガイの秘密」という第42回自然科学観察コンクール(2001年)で文部科学大臣奨励賞をもらっている中学生の研究に出会った。

中学生たちの研究は、なぜ浮くのか?に対して、比重を調べたり、表面張力を変化させるなど、どちらかというと How の方(至近要因)に視点が向いている。Why (究極要因)に答えるためには、浮かぶことによってどのような進化的な利点があるのかを考える視点が必要だろう(「このような生物に対する「なぜ」」については、このブログでは何度も触れている)。


たった一例の貝が浮いていることから、いろいろ考えさせてもらった。