今年はブタ年

今年のお正月に、中国や韓国では、今年の干支をブタとしていることが話題となった。Wikipedia などで調べてみると、ブタの学名は Sus scrofa domesticus であり、イノシシの学名は Sus scrofa だから、結局、家畜について、亜種としているにすぎないらしい。


同種なのだから、ブタとイノシシを交配すれば、イノブタが出来るのも当たり前だろう。このイノブタを日本で初めて作ったのが和歌山県畜産試験場らしくて、その試験場は和歌山県南部のすさみ町にある。それで、すさみ町では、ミニ独立国「イノブータン王国」などと町おこしに使っている。


ところが、このイノブタで困るのは、飼育したものが野外に逃げ出したり、意図的に放したりすることがあって、「日本の侵略的外来種ワースト100」中、哺乳類の2番手に挙げられているらしい。幸いなことに和歌山県の南部では、ほとんど広がっていないようだ。


元々同種なのだから、別に遺伝子が混じり合ってもかまわないとも思うのだが、
ニホンイノシシ Sus scrofa leucomystax
リュウキュウイノシシ Sus scrofa riukiuanus
と、それぞれが亜種と見られているところから、それぞれの地域で分化しており、遺伝子組成なども地域で違っているのだろう。そんなところに、栽培種のブタの遺伝子が混じるようでは、好ましくないのだろう。


そんなことを考えつつ、Wikipedia を読んでいると、

(ブタは)イノシシ(Sus scrofa)を家畜化したものである。ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギといった家畜は原種が絶滅、またはかなり減少してしまっているが、ブタは、原種であるイノシシが絶滅せず生息数も多いまま現存しているという点が特徴的である。

という記述に、がぜん興味を持った。


これは、家畜というものが、ある地域で人為的に選抜されて、特定の特徴を強調するようになった結果、そのような人為的な選択圧にさらされた元の集団も、家畜になってしまったということではないだろうか? 例えば、ニホンオオカミが絶滅したことの原因は、イヌになってしまったことなのだろうか?


イノシシの野生種が残ったのは、地域ごとの分化の程度が大きくて、よそからブタの品種を持ち込まれても、なかなか入り混じらなかったからだろう。あるいは、家畜としてのブタが、野生化しにくかったこともあるかも知れない。そんなところに、中間的なイノブタが野生となって紛れ込むと、戻し交配をすることになって、遺伝子浸透の典型的な実例になるだろう。


以上のようなことを考えていると、家畜(栽培生物)が急におもしろく思えて来た。これまでは、家畜なんて、一般の生物から見れば特殊な世界だと思っていたのだけれど。そう言えば、Darwin種の起源の最初の章で「飼育栽培のもとでの変異」を扱っているではないか。


家畜というのは、「種」の存在様式や進化について考えるのに適した材料ではないかと思えて来た。


そういう訳で、家畜について、思ったこと、整理したことなどを、おいおいと書いて行きます。