ニラバラン

この植物は、私たちが今の家に住み始めて迎えた最初の春の2008年には、芝生や敷地の斜面部分などのいくつかの場所で生えていた。今もほぼ同じような場所で生えていると思うが、周りの植物が伸びてきたせいか、以前に比べると少し勢いが衰えて来たような気がする。



全体的にはニラかネギのような感じで、小さくても可憐な花が咲くものと期待していたら、花の穂が出ても、花らしい花は咲かずに、いつの間にか終わってしまうといった印象を持っていた。

今回、同定するに当たって、ユリ科のところを見ていたのだが、どうもピッタリ来るものに出会えず、この「日本の植物たち」のサイトで、単子葉類をシラミつぶしに見て行って、なんとかニラバランにたどり着いた。

ラン科だといわれてみると、たしかに独特の花の形をしている。でも、ラン科の植物にしては、昆虫をおびき寄せるための特殊な形態をしていないように思えるが、どのように花粉の受け渡しをしているのか、追々調べて行きたい。Wikipediaニラバランによれば、「実用的価値はない。鑑賞価値もないに等しい」などと書かれている。ヒトにとってはそうであっても、植物自身は、なんらかの目的をもって花を咲かせているに違いない。

また、いくつもの県の絶滅危惧植物にも挙げられている。我が家の植物にしては珍しいことに、生粋の在来の植物ということになる。「海岸に近い日当たりの良い草原に見られる多年草」ということだから、住宅地が出来る前から生えていたものが、我が家に引き継がれて来たのだろう。

絶滅危惧種だの、要注意外来生物だの、生物をランクづけすることは好みではないが、今まであまりありがたみを感じたことのない植物だっただけに、今回調べたことによって、大事にしていきたいと思うようになった。


(2010/06/08 追記):南方熊楠の文章を読んでいたら、ニラバランのことに言及している個所があった。ネットで「ニラバラン、南方熊楠」で検索しても、あまり多くのサイトは引っかからないのだが、「ニラバランを見んと思わば新庄村へ、シランを見たくば救馬谷へ、クモランを見たくば秋津村へ、チャガセキショウを見たくば上秋津へ行けば、天然性の植物景観を見らるる」という文章を引用している人がいた。この文章は、京都大学が田辺に植物園を作るという計画が持ち上がったときに、それに対する熊楠の反発の文章なのだが、そんな風に言及されたニラバランが、今我が家の庭に生えていることに感慨を覚える。

また、最近見つけた「なかなかの植物ルーム」の「ラン科の花粉塊」というページには、ニラバランを訪れた昆虫が花粉を付けている見事な写真が載っている。