「責任者出て来い!」という話

橋下大阪府知事が、府立施設へ行って、マスコミ受けする話をするたびに、「そうではないだろう」、そんな末端の公務員の揚げ足をとることより、もっと根本の責任者を問い詰めろよと思って来た。博物館で言うならば、その博物館の構想を決めた人間は誰なのかということである。

ところが、こんな話があった。【橋下日記】(19日)安藤忠雄氏に「応援団長」依頼 - MSN産経ニュース
「近つ飛鳥」や、「狭山池」の博物館の設計者が安藤である。これらの博物館に対する不満は先に書いた(大阪府立の博物館は、ちょっと変だぞ)。そのすべての責任が安藤にあるとは言わないが、あのようなバブリーな建物に対する責任の一端はあるだろう。そんな人間に「応援団長」を依頼して、いったいなにを変えようというのか?


そんな訳で、思わず、「責任者出て来い!」と言いたくなった。「責任者出て来い!」となると、ぼやき漫才だろう。Wikipediaの「人生幸朗・生恵幸子」の項目を見ると、これが実によく書けている。まるで、ふたりの漫才のかけ合いを聞いているような気になってくる。

「責任者出て来い!」「出てきはったらどないすんねんな!」「謝ったらええのや」のフレーズと共に一世を風靡したということなのだが、人生幸朗の亡くなられたのは1982年となっている。つい最近までその漫才を聞いていたような気がするのだが、ずいぶん昔に亡くなられていたようだ。一方、生恵幸子の方は、2007年2月5日とほんの1年前に亡くなられているのに、これも知らなかった。思えば、子供の頃、好きな漫才師だった。

「(幸朗)わたしのこと、みなボヤキやあ、ボヤキやあ言うてねえ」
「(幸子)当たり前や。誰かて言わはるわ。ボケ!」
「(幸朗)しかし、みなさん、これは私がボヤクのやのうて、今の世の中が私をボヤかしまんねん」

そして、「まぁ皆さん聞いてください」で始まる話が、今にも聞こえてくるようだ。

ついでに、Wikipediaの記述にはないのだが、

   朝日が昇るころ社長さんが帰る
   ああ〜あ、いい気持ち
   どうして朝日が昇るのか、
   電信柱に聞いてみよ、タララッタ
   あ〜あ、社長さんはいい気持ち

という歌を、生恵幸子が歌っていたのが、今も耳に残っている。この歌への人生幸朗のつっこみは正確には思い出せないのだが、「朝日が昇らんかったら、朝にならんやないか」、「電信柱が、しゃべったらどないすんのや」のようなものだろうか。

この歌は、生恵幸子が勝手に作って歌っているのかと思っていたら、実際の歌手が歌っていたものらしい。最近のネットの情報力はすばらしくて、以下のサイト(笑わぬでもなし: 社長さんはいい気持ち/鈴木やすし)に解説がある。実は、上の歌詞はそこからコピーした。



博物館の話に戻って、ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)という博物館は、橋下知事の博物館見直しの象徴的な標的にされているようだ。難波の駅からも近く、何度も前を通りすぎたことがある(すぐ隣のジュンク堂という大きな本屋に行くため)のだが、一度も入ったことがない。たぶん今後も入ることはないと思っていたのだが、今回の橋下知事による騒ぎで急に興味を持った。

こういう博物館を誰が作ったのかと思ったら、やっぱり横山ノック知事の時代にできたらしい。でも、知事の独断で作ったということでもなく、きっかけは、横山ノックが知事になる前に、砂川捨丸の愛用の鼓が寄付されたことだったらしい。おそらくは、設立に当たって、上方演芸とはなにかを問い直して、それなりの構想をまとめたことだろう。たぶん、府議会でも承認したのではないか?(→ 橋下知事の与党の議員の人たち)。それが、知事が代わったら、知事の裁量でどうにでもなるのなら、そのような決定機構がおかしいということになるのではないか。

ただし、年間経費4億3,000万円で、吉本興業に支払う賃貸料2億8,000万円というから、そのあたりに癒着のようなものがあるのなら、問い直されるべきだろう。Wikipedia - 大阪府立上方演芸資料館 (08/03/19 チェック)

ここから後は、実際に博物館へ行ってみて判断するべきだろうが、数億円くらいの出費ならば、上方演芸が大阪の文化の中で占めているものを考えれば、必要な施設ではないかという気持ちになっている。

上に述べた人生幸朗・生恵幸子の漫才についても展示があるらしいし、演芸ライブラリーでは、各放送局の演芸番組も視聴できるらしい。吉本興業のテーマパークのようなものを勝手に想像していたのだが、けっこう真面目な施設のように思える。

橋下知事は、口を開けば、大阪府が破産状態であると言うのだが、りんくうタウンなどの巨大なプロジェクトの赤字に比べれば、博物館の赤字は微々たるものだろう。もちろん、この機会にぜいたくや無駄を無くすることは良いことだが、破産処理の弁護士のように、なにもかもやめてしまって、切り売りすることが知事のやることだとは思えない。博物館のことを微に入り細に入りケチをつけるくらいなら、巨大な赤字の原因をもっと突き詰めるべきではないのか。まさに「責任者出て来い!」である。