アオバハゴロモ

7月20日に台風6号が通過したので、畑の植物で背丈の伸びていたものは、強風でけっこうな被害を受けた。枯れたり折れたりしたものもあるが、新たな芽も伸びてきて、だんだん台風の影響も見えにくくなくなって来ているようだ。



(2011/07/25 撮影)

上の写真の昆虫は、写真に撮ったのは初めてであるが、子供の頃から認識していたように思う。この路傍百種を書くために、いろいろなサイトで昆虫の写真を眺めていて、「ああ、あの昆虫だ」と思ったものだった。新芽の出た木枝などに密生していて、白い綿毛をまとっていたような印象がある。

いつもの「福光村昆虫記」によれば、白い綿毛は、幼虫が出したものらしい。最初、幼虫が密集していて(同時に産み付けられた卵塊からのもの?)、その後、成虫になったものがどこかへ飛んで行くのだとしたら、成虫になった直後のものを見ていたのだろうか。

このようなヨコバイやウンカの仲間では、前にアワダチソウグンバイミドリグンバイウンカなどを取り上げているから、案外、好みの動物なのかも知れない。農業害虫ということで、農学関係の人が詳細に調べているに違いないと思って、食わず嫌いのところがあったのかも。


久しぶりに、名前談義を。
この種類の学名は、Geisha distinctissima (Walker, 1858) である。Geisha という属名は、「芸者」だろうということを、多くの人が言及している。この種類の命名者のWalker は、カッコに入っているから、Geisha という属名は別の人が創設したことになる。ところが、ネットで検索しても、その由来やその属名の命名者にはほとんど行き当れなかった。唯一「神奈川の昆虫」というサイトのこの記事のコメント欄に、Wikispecies の説明に触れてあった。


つまり、Geisha という属名は、Kirkaldy が 1900 に創設したことがわかる。さらに、George Willis Kirkaldy (1873 - 2.II.1910)は、English entomologistであり、the Hawaiian Sugar Planters' Association で、働いていたらしい。

ここから後は、該当する文献は挙げられていないので、どのような意図で命名したのか、これ以上のことはたどれない。

それでも、Geisha 属に所属するのは、Geisha distinctissima が唯一の種類であるから、monotypy ということになる。つまり、この種類だけが、他の関連する種類と比べて、ものすごく違っているということで、別の属を立てたのだろう。そういえば、種小名の distinctissima というのは、非常に顕著だという意味だろう。

そうすると今度は、種の原記載者が、この種の特徴をどのように認識していたのかが気になってくる。元々は、Poeciloptera distinctissima Walker, 1858 として記載されたらしい。Walker というのは、Francis Walker らしくて、そこでは論文の一覧表も掲げられているのだが、1858年のどの論文で書かれたのか、特定しにくい。Lepidoptera(鱗翅類)の論文を多数書いているようだが、以前は、このハゴロモの仲間もLepidoptera とみなされていたのだろうか?


そんなわけで、昆虫の素人であるにもかかわらず、いろいろなことがわかってきた。 Wikispecies 恐るべし。


名前のついでに、ハゴロモという和名も、天の羽衣のことを思い浮かべると、なかなかのものと思えてくる。誰が命名したのかは、またの機会に調べてみたい。