熊野速玉大社のなぎの木

「名木」のカテゴリーについて、ほとんど書いていないが、先日熊野速玉大社で「なぎ」の木を見たので、書いておきたい。




('10/10/10 撮影)

神社の説明板によれば、平重盛が植えたとのことで、幹まわりが6m、高さ20mで、国内で最大のなぎの巨木だという。由来の通りだとすれば、樹齢 900年くらいということになる。この期間にわたって、熊野詣をする人たちを迎えて来たことになる。

ちょうど3連休で多くの人が来ていて、団体客を案内するガイドさんが、この木の前で説明していた。何人かのガイドさんの説明を聞いていると、それぞれの話し方には個性があるようだが、ほぼ同じことを説明しているようだった。つまり、上に述べた歴史と大きさのこと、なぎという名前が凪に通じることで航海の安全につながること、そしてなぎの葉っぱには葉脈がなくて、縦に引っ張っても裂けないこと、そして木に雌雄があり、この木は実が実らないが、神社の方でなぎの実で作った「なぎ人形」を売っていることなど、手際良く説明していた。

実は、こういう話は以前にも聞いたことがあったので、地元の神社へ行ったときに、妻に説明したことがあった。うろ覚えの知識で、葉っぱを横向けに引っ張ったら、簡単に裂けてしまった。男女の仲も、方向を間違えると簡単に裂けるものだという“教訓”として、毎年初詣に行くたびに新しい葉っぱをもらって帰るようにしている。

神社の御札などの売り場で、なぎの木の苗が売っていたので、買って帰った。葉っぱが2対付いているだけの小さな芽生えなのだが、無事に大きくなってくれることを期待している。

ここまで、書いてみると、神社の説明板に書かれていた以下の藤原定家の和歌が実感できるような気がする。平重盛から藤原定家までそんなに時代が離れていないから、今あるなぎの木の葉っぱを折ったのかはわからないが、いずれにしても、その時代からなぎの葉を特別な思いで見ていたことになる。


千早振る熊野の宮のなぎの葉を 
  変わらぬ千代のためしにぞ折る

ついでに、この木の生えている場所は、正面の入口から入ると通り道にあるのだが、横の駐車場から入ると、少し後戻りをしなければならないので、最初に何回か行ったときには見逃していた。はるばる山を越えてたどり着いた熊野詣とは違って、車で楽をして行くと、そんなものなのかも知れない。