内井惣七の「科学哲学入門」


この本は、どういう経緯で買ったのか思い出せないのだが、おそらく、誰かが勧めていたのと、機会があったら科学哲学全般のことを勉強しようという気持ちが一致して、買ったのだと思う。買ったのは、2002年と書き込みがある。しかし、その後まったく読んだ気配がなくて、先に「進化論はなぜ哲学の問題になるのか」という本を読んだことがきっかけとなって、思い出したように手にとってみた。

この中の、「目的論的説明」のところを読んだだけなのだが、非常によく書けている本だと思う。単なる研究紹介ではなく、なにが問題なのかが明確に書かれており、しかも、最新の研究例を述べるのではなく、むしろ19世紀にまで遡って、問題の発祥から解きほぐしてくれているところなどは、まさに“入門”と銘打った本にふさわしいものと思われる。

この著者についてネットを見てみると、ネット上にも多く文章を公開されておられる。それらを読むと、目的論や機能など、先の「進化論はなぜ哲学の問題になるのか」で問題になっていた項目にも、触れておられる。

そもそも、先の本の若手の執筆陣たちの大部分が、どうやらこの人の研究室の出身らしい。そういうことなら、あの本のテーマの選び方や問題の論じ方などにも合点がいく。この分野の学派の内情についてはまったく知らないのだが、偉大な師の下で学んだ若い人達をうらやましく思うとともに、その師が広げた枠組みから抜け出すことの難しさに少し同情してしまう。

そういう訳で、「進化論はなぜ哲学の問題になるのか」と、この内井惣七氏が書かれている文章とを合わせて勉強する中で、思いついたことを書いていきたい。