ニワゼキショウ、オオニワゼキショウ

ニワゼキショウは、今の家に住み始めて迎えた最初の春(2008年)には、既に多数が生えていたと思う。そして次の年には、畑を作ったり、通り道が決まっていったときに、その周縁部に非常に増えて来て、薄い赤の小さな花にもかかわらず、満開のときにはなかなかの壮観であった。そのときに、色の薄い薄紫の花も混じっていたが、それも“変異”だということで、そんなものかと思っていた。




今年は、冬の時期から、やたらと草丈が伸びるものがあって、満開のときにはかなりの花が咲くものと思っていた。ところが実際に咲いてみると、まず薄紫の花から咲き始めて、薄赤の方が、あまり多くなかったので、少しずつ我が家の庭の土質が変わって来て、片方が選択されて来たのかと思っていたら、なんのことはない、少し遅れて赤い花が昨年と変わらず満開となってきた。

そんな風に花の時期がズレていることを意識し始めると、草丈が長く伸びているものは、薄紫のものに多いことも気になりだす。そんなことを考えると、本当に同種なのかと思えて来た。そして、そのことをブログに書こうと、実際に花の写真を整理していたら、花びらの形もかなり違うことにも気がついた。つまり、先端で先細になる感じや、中心部の花びらの重なり方で、かなり違っている。






こんなものをどうして同種にするのかと思って、いつもの植物雑学事典を見たら、なんのことはない、ニワゼキショウに似ているものとして、オオニワゼキショウという種類が挙げられているではないか。そこで挙げられている果実の大きさや草丈が大きいことも一致する。しかし、この仲間は分類にいろいろ問題があるようで、学名についても、植物雑学事典では不明のままにされている。

それで、オオニワゼキショウということで検索すれば、さらに多くの情報が見られる。このサイトによれば、ニワゼキショウとオオニワゼキショウが交雑した雑種は、アキマルニワゼキショウと呼ばれるらしいが、不稔となるらしい。それならば、ring species でない限りは、両種は別種だと思うのだが、原産地のアメリカ合衆国では、もっと多くの種類があって、交雑が起こったりしているので、簡単には決着がつかないらしい。上のサイトで引用されている山口裕文らの論文は、CiNii で、無料で読むことが出来る。さらに、CiNii で「ニワゼキショウ」で検索してみても、山口らの1980年代の論文以降、特に分類学的なものは出ていないようなので、この分類学的な結論は未だ出ていないようだ。


以上のことを踏まえて、我が家のものを改めて観察してみたいと思うのだが、このところ、開花している天気の良い昼間に、観察する機会に出会えていない。今までの印象では、赤紫と薄紫では、花の形や大きさが違っていたように思うが、今となっては、2年前から薄紫のものが、すべてオオニワゼキショウだったのか、ニワゼキショウの色彩変異のものが混じっていたのか自信がない。今後、オオニワゼキショウニワゼキショウとの雑種が出現しているのか、またニワゼキショウの薄紫タイプのもの混じっているのかなどの点にも注目して観察して行きたい。

最初からニワゼキショウとオオニワゼキショウが別種であると知識として聞いていたら、こんなにいろいろ考えることもなかっただろう。花色の変異という聞きかじりの知識のおかげで、却ってニワゼキショウの面白さを自覚することになった。