partonomy か partonymy か

レトリックのことを学んでいて、メトニミーのうちで、「全体と部分の関係」に関するものは、partonymy と呼ばれるらしい。「空間・場所の近接関係」の toponymy と、並べて説明されている。

ところが、瀬戸賢一がメトニミーからシネクドキの区別を強調するときには、partonomy とtaxonomy を対比させている。

当初、私の中でも、この区別は混乱していて、対比に引っ張られて、どちらかがミススペルになっているのかと思っていた。Google で検索しているときにも、partonymy を含めた検索語句で、「もしかして: partonomy 」と提示されたこともあった。実際、partonomy と partonymy では、前者の方が該当の件数がずっと多いようだ。しかし、どちらの単語も、ちゃんとした論文にヒットする。

語の構成要素として見れば、-nomy は「…の知識体系」「…の秩序法則」の意味だろうし、-onymy は「名称[用語]の種類[集合]」や「(特定の)種類の名称[用語]の研究」の意味となるらしい。

そうすると、「全体と部分」に関して、比喩としてのメトニミーを表すときにはpartonymy で、関係を表すときには partonomy となるのだろうか。

このあたり、きちんと識別している人には、当たり前のことなのかも知れないし、それほど厳密な区別がないのかも知れない。それでも、気になったので書いてみた。どなたか詳しい方、ご教示ください。



(2010/03/05 追記):
楠見孝編(2007)「メタファー研究の最前線」なる本を買ってしまった。なんと8000円もする本で、自分の専門でもない本だから、どこかの図書館で読めないかと思ったのだが…。そこの、瀬戸賢一の文章でも、PT誤謬ということ、partonomy と taxonomy が対比されている。そうすると、前にも引用したことがあるのだが、「黒田 航 (2008e). パートニミーとタクソノミーの混同について: メタファーの成立基盤 (PDF)」という論文でも、上に書いた用語の使い分けを混同しているようだ。ついでに、私が以前に書いた文章も、黒田の用語に引っぱられて、パートノミーとするべきところを、パートニミーとしている。