ホウセンカ

今年、ホウセンカの種を買って来て植えた。ホウセンカという名前には、いろいろな記憶やイメージが重なっていて、身近で眺めてみたい気になった。子供の頃、生まれ育った家の小さな庭の片隅で、咲いていた記憶がある。それに、小学校の理科の教科書で、種がはじけることが載っていたように思う。小学校の花壇や町の中の児童公園の花壇などにも植えられていて、種を飛ばして遊んだこともあった。





それに、島倉千代子が歌う「鳳仙花」という曲が妙に耳に残っている。私の母の名前が千代子であり、母はこの歌手が好きだったらしい。私にとっては、あのようなベタベタした演歌の雰囲気にどうにもなじめなかったのだが、母が亡くなってかなりの年月が経ち、ちょっと振り返ってみたい気になったこともあるのだろうか。

それに、中上健次の「鳳仙花」という小説も読んだことがある。さらに、この文章を書くためにネットで調べたら、沖縄では「てぃんさぐ」と呼ばれ、民謡にもなっているらしい。東南アジア原産ということだが、古くから日本に入って来ていたらしい。結局、多くの人々に、いろいろな印象を焼きつけてきた植物なのだろう。

我が家で育ったものは、斑入りの花もあって、少し園芸的に改良されたもののようだ。もっと大きく育つものと思っていたら、この夏は、遅い梅雨明けと、その後に雨がほとんど降らなかったこともあって、もうほとんどが盛りを過ぎてしまったようだ。

最近は流行らなくなったのか、あまり見ることがなくなったような気がする。せめて我が家の庭ででも、こぼれた種が芽を出して、来年もまたそこらじゅうで生えてくれることを期待している。