ワッハ上方
3月1日に大阪へ行くことがあったので、「ワッハ上方」へ行って来た。
この博物館については、大阪府の橋下知事の就任以来、博物館の見直し政策の標的になって来たことで、ちょうど1年前くらいにはずいぶん話題になった。
「責任者出て来い!」という話 - ebikusuの博物誌に書いたように、実際に行ってみて判断するということで、行って来た感想を書く。
結論からいうと、4Fのフロアでの展示物や全般的なことに関して、あまり感心しなかった。上方演芸の歴史を語るには、展示の内容がちょっとお粗末であると思った。展示物の多くも、テーマパークみたいなゲーム感覚のものが多かった。殿堂ギャラリーというのも、殿堂入りした芸人を顕彰するにしては、ちょっと“しょぼい”という印象だった。
砂川捨丸の鼓の寄贈から始まって、「上方演芸に関する資料を収集・保存して、後世に引き継ぐ」などという高い理想を掲げているので、大いに期待もしたのだが、実物の展示は多くなく、写真や模型などのとおりいっぺんの展示物が多かった。
演芸ライブラリーで、人生幸朗・生恵幸子のぼやき漫才を久しぶりに見たことが、まあ行ってみて良かったというところか。
ちょうど入場したときには、若手の落語のライブが、残り10分くらいのところだった。400円の入場料で、落語の実演が聞けるのはすごいなあと思ったが、すぐに終わってしまったので、判断のしようもなかった。
もらってきたパンフレットの「月刊わっは」によれば、ワッハ上方にあるいろいろなホールや演芸場で、いろいろな催し物をやっているようだ。演芸というものが、実演を中心とするものだろうから、そちらの方に力を入れているのかもしれない。しかし、それならばホールの運営をメインにするべきだろうし、大阪府が博物館として運営することの意味からはズレてくるだろう。
「大阪府立の博物館は、ちょっと変だぞ - ebikusuの博物誌」に書いたようなことが、この博物館にも見られるようだ。
橋下知事の博物館政策には、まったく賛成するものではないのだけれど、この博物館に関しては、この機会に改めて方針を再検討をした方が良いのではないかと思った。(念のために付け加えれば、それは橋下知事のようなトップダウンで進めることではない。関係者が、上方演芸のための博物館(!)として、なにが重要なのかを改めて考えることである。)
資料の収集・保存をするのなら、なにも大阪の繁華街の中心に居座る必要はないだろう。郊外で、もっと広いスペースを確保することもできるだろう。興行などの実演を中心に据えるために、あの場所が適しているというのなら、むしろ吉本興業が実際の運営をやった方がよいだろう。今のテーマパークのような展示内容についても、吉本興業ならばもっとうまく運営するのではないか。なによりも、あのビルの持ち主が吉本興業であり、そこに高額の賃貸料が払われているところに、癒着の感がしないでもない。橋下知事に言われるまでもなく、限られた予算の中で、府立の博物館として、なにをやるべきなのかを考えるべきだろう。
私としては、博物館を見た後で、そこで見たことを改めて学習したりして、また機会があれば再度訪問してみたいと思うものなのだが、この博物館に関しては、そんな気にはまったくならなかった。関係者の人たちにしても、上方演芸を愛する人が、何度も訪れる場所になっていると思いますか?
(2009/03/16 追記:橋下知事の政策と混同されないように、少し追記・変更しました。)