G.G. Simpson と レトリック

レトリックのことを勉強していたら、メトニミーは「隣接性(contiguity)による比喩」とあった。この contiguity という単語に対して、どこかで見ことがあると思ったら、G.G. Simpson(1961) の Principles of Animal Taxonomy の訳本(1974)「動物分類学の基礎」で見たのだった。その本の初めの部分に出てくるのだが、大学生の時代に、なにかとんでもなく重要なことが書いてあるように思いつつ、一生懸命に意味を読み取ろうとした記憶がよみがえってきた。

その当時は雲をつかむような話だったが、英語の原書が手近にあることと、メタファーなどのことを考えた後なので、すんなり理解できたような気がする。

"On order in nature and ordering in science" という節で、自然の中から、relationships among things をどう考えていくかというところで、心理学の用語の借用として association by contiguity と association by similarity が出てくる。

Simpson のいう association by contiguity は、a structural and functional relationship であり、a single Gestalt にも関わってくるものらしい。その例として、植物とそれが生えている土壌、ウサギとそれを追うキツネ、ある生物内の個別の器官、森の中のすべての木々、ある集団からのすべての子孫、などの間での関係が挙げられている。association by similarity の方は、単純に、共通の特徴点をもつものを一まとめにするということらしい。そして、このような2つの関係が互いに交錯する場合があることについてもなんとなく理解できる。

Simpson がここで言っていることは、前にメタファーとメトニミーに触れた記事で述べたように、レトリックが、ある対象を別の対象でなぞらえるものであるのに対して、複数の生物をどのような論理で比較して、並べ立てるか(つまりは、どのように自然の秩序を見出すか)を述べているのだろう。


私としては、長年のとっかかりが取れてすっきりしたところで、おしまいにしてもいいのだが、Simpson の言っていることは、三中さんがさかんに言っている認知科学につながってくるのだろうか。もちろん、Simpson の妻は心理学者であったらしいから、本の冒頭で大きな話をするために、単語を借りてきただけなのかもしれないが…。Simpson は gradist だから、今さら本全体を読み返す気にはならないのだが、そういう彼が、association by contiguity とからめて、どのような分類学の話をしているのだろうか。