大阪府立博物館と橋下知事4

橋下知事プロジェクトチームが出した案について、教育委員会と改革プロジェクトチームが、5月1日に議論をしているのだが、その概要が先週になってやっとネットに公開されていた。


全体としては、学校などの教育現場の話が多いので、博物館等に関わる話は、以下の部分だけのようだ。

【改革PT】

 国際児童文学館については、中央図書館という便利が良く、65万人という利用者がおられるところに移転して、広く府民に利用していただくということが必要ではないかと考える。また、中央図書館の中に国際児童文学館という看板をかけるという方法も考えられる。

 博物館については、時代ごとの専門博物館ということかと思うが、学術研究をするのであれば時代ごとでよいのかもしれないが、子どもたちに歴史を教えるということでは、弥生文化を近つ飛鳥博物館に持って行って、弥生、古墳、飛鳥時代という歴史の流れを子どもたちに見ていただくことがなぜいけないのかということについてはよく分からない。また現地性と言うのであれば、遺跡や古墳のあるところにはすべて博物館がいるということになる。


教育委員会

 国際児童文学館については、もっと広く利用していただくという点は理解できる。もともと万博公園の中で民族博物館と連携するとか、自然の中で読書をするという意味もあった。今後議論していきたい。

 博物館については、府が総合歴史博物館という構成をとっていれば、お示しの提案もあったと思うが、それぞれの時代背景をもとにフィールドをベースとして展示を考えて、時代を混在させるのではなく、時代ごとに子どもたちに歴史を分かってもらうためには、今のような形がいるのではないかと思う。小学校6年生の社会科の教科書にも弥生時代をとらえて、弥生文化博物館が紹介されている。改めて議論したい。


【改革PT】

 国際児童文学館を中央図書館に移転させれば資料が喪失されるとか弥生文化博物館を統合させると教育財産が失われるという言い方は、あまり冷静な言い方ではないと思う。


【小河副知事】

 博物館は府民の貴重な教育財産というが、教育委員会が所管している博物館しか議論されていない。大阪府内には国が持っている民族博物館や、市が持っているもの、府の狭山池博物館など、トータルの博物館をどう共有していくのか、広げて議論してほしい。


【知事】

 「教育日本一」をめざすということを言って、選挙に当選したので、これは必ずめざしたい。この日本一をめざすときに、教育にお金をかけるやり方と、理想論ではあるが、人が汗をかくやり方もあると思う。府の財政に余裕があれば、人を配置するなりいろいろお金をかけていくやり方ができると思うが、府がこのような状況になったのは我々全員の責任でもあるので、府庁職員も大阪のために汗をかいている。今おられる教職員の方々にも一度汗をかいた上で、「教育日本一」をめざすようなやり方ができないものか。理想論で申し訳ないが、お金をかければいくらでも教育のレベルはあがるだろうが、教育は人そのものなので、汗をかくやり方についても考えていただきたい。


改革プロジェクトチーム(PT)と教育委員会が議論をして、最後のところで、副知事や知事が締めくくりの発言をしているようであるが、限られた時間の中で、それぞれが言いたいこと、思いつきを言っただけで、議論というようなものではないようだ。これで、現場の意見を聞きましたというのは、まやかしだろう。気がついたところを、以下に。

知事の発言が支離滅裂なこと。「お金をかければいくらでも教育のレベルはあがるだろうが、教育は人そのものなので、汗をかくやり方についても考えていただきたい。」などと言いつつ、お金はかけない、汗をかく気にもさせない、というものだろう。トップの人間が自ら「汗をかく」というのならわかるが、トップが部下に「汗をかく」ことだけを求めている。

副知事の発言は、こういう場で、そんな当たり前のことを言うなよな、という感じ。今になって、トータルの博物館のことを考えましょうというのなら、これまでそんなことも考えずに博物館を作ってきました、と言っているようなものではないか。

改革PTは、いったいなんの権利で、現場にズカズカと踏み込んでいるのだろうか? 「現地性と言うのであれば、遺跡や古墳のあるところにはすべて博物館がいるということになる」に至っては、まるで子供のへ理屈である。そのくせ、図書館のことも博物館のことも、実情を理解しようともしていないようだ。池上曾根にしろ、泉北にしろ、近つ飛鳥にしろ、狭山池にしろ、その場所が第一級の遺跡や史跡だったから、博物館を建てたのではなかったのか。

トップもダメ、計画を立てるスタッフも現場を知らんでは、これはうまく行くはずがない。旧日本軍が、敗戦に向かって、壮大な自滅的作戦をやっているようなものだろう。


そんなことを考えていたら、「大阪ミュージアム構想が浮上 名所ライトアップ 橋下知事検討 - MSN産経ニュース」というニュースが流れている。

これもまた支離滅裂で、一方で博物館をつぶして、府内全域をひとつの博物館に見立てるのだという。大阪府にはたしかにすばらしい場所がいっぱいあるのだけれど、こういうデタラメな思いつきで弄くりまわして欲しくない。この騒動で、現場の職員はまた汗をかく気をなくしただろうなあ。


そんなこんなで、大阪府という自治体の体質として、50年・100年を見据えた博物館を運営していくのは、無理なのではないかと思えて来た。一方で、大阪市には、特色をもった立派な博物館がいっぱいある(ハズレもあるけど)。狭山池博物館は、狭山市が共同で運営するようになるらしいから、すべての博物館を地元の自治体に譲ってしまうというのも、悪くない案のように思えて来た。話のわからん知事や官僚を相手にするよりは、マシだろう。