大阪府立博物館と橋下知事2

橋下知事大阪府の博物館ということで、大阪府/財政再建プログラム試案というものが出ている。ネットで公開されているので、そこの「公の施設 PDF (375KB)」というものを印刷して眺めてみた。



知事直属のプロジェクトチームなるものが鳴り物入りで作成したらしいが、こんなものを作っていること自体が、この改革がうまく行かないことを示しているように思う。性格も目的も違っている27の施設について、一律の「個票」なるものを作成しているが、これを見て、どのような判断をするのだろうか。

例えば、収入と支出、それに利用者数があって、利用者1人あたりの府費投入額などというものが挙げてある。博物館などでは、この金額が何千円にもなるところがある。つまり、入場料よりもはるかに高い金額が、利用者1人当たりにかかっていることになる。でも、そういう数字だけを見て、効率が良い悪いを判断できるのだろうか。博物館の評価を、こういうことでしか測れないことに、このプロジェクトチームの発想の貧困さを感じる。

他にも、数字は載ってはいるけれど、その中味に立ち入って考えてみると、よくわからないことも多い。たぶん、ゆっくりと説明をしてもらえば、それぞれの館についての事情や経緯もあるのだろう。でも、これまでの橋下知事の行動パターンからすると、そういう数字の一部分だけを取り上げて、外向けのパフォーマンスをやるような気もする。

また、見直しの方向性が、弥生と近つ飛鳥を集約して「総合歴史博物館」を目指し、泉北と狭山池が地元に移管というのでは、果たして落としどころになるのだろうか。「総合歴史博物館」と銘打ってはいるものの、縮小のための“総合”というのでは、名前が泣くだろう。泉北は、ほとんど忘れられかけた状況の中で、少ない予算で頑張っていたのに、最後の結果が切り捨てでは、なんとも無念だろう。近つ飛鳥と狭山池は、安藤忠雄の建物で、思いっきりバブリーなのに、知事から安藤に応援団を頼んだとの記事もあったから、アンタッチャブルなのだろうかと思えてくる。

これまでに、このホームページでは、泉北以外の3つの館について、あれこれ不満を書いてきた。もっと現地に密着したテーマで展示を考えるとか、建物やレプリカでびっくりさせるのではなく、本物の資料を大事にするとか、改革するべきことは、いっぱいあると思う。しかし、上のような頭ごなしの改革案が飛び交っている中では、まず存続を決めてから、次に改善案を考えるべきだろう。

学芸員の人たちにしても、方針が決まらないことには、対処のしようがないだろう。今あるものを生かしながら、これこれの予算で、より良いものを作りなさいというのなら、アイデアも気力も湧いてくるだろうが、今のようなこれまでの努力の全否定の案では、バカなトップをもった不幸を嘆くしかないだろう。

博物館は、府知事の思いやりや恩寵によって作るものではない。府の財政が赤字になったら、今まで引き継いできた財産をたたき売るようでは、バカ殿様となにも変わりがない。橋下知事の得意の発言に「次の世代に借金を残さない」という類のものがある。「次の世代に宝物を伝えない」のは、トップとしてなんとも罪深いことではないのか。