♂♀の記号の意味

雌雄同体を示す記号は、図の通りであるが、これは当然♂と♀をあわせたものだと想像がつく。

それで、♂と♀の記号としての起源については、富山商船高専言語学者である金川欣二さんの『フェイスマークの図像学 (^_^;』に詳しい。

この記事は、インターネットが普及し始めたとき(おそらく10年くらい前に)にはじめて読んだのだが、インターネットがなければ、このようなことを知ることはなかっただろうと感激したものだった。金川さんの説明を読んでいただくのがベストなのだが、私なりに、♂♀記号に関連する部分を要約しておく。

金川さんの文章は本来は言語学の話で、記号学者パースが、意味するもの(signans)と意味されるもの(signatum)との関連の仕方によって、記号というものを3種類(アイコン、インデックス、シンボル)に分けたことに基づいて、フェイスマーク(顔文字)のことを論じられたものだ。アイコン−インデックス−シンボルの順番で、意味するものと意味されるものの関係がうすくなって、シンボルではただの約束事になっている。ちなみに、フェイスマークはアイコンということになる。そこで、

(♂♀の記号は)、マルス(軍神で♂は火星も意味する)の盾と矛、ビーナス(美神で♀は金星も意味する)の手と鏡だということを知っている人は少ない。軍神と美神がオスとメスの代表だとされたのである。こんな記号に決めたのは植物学者の輪廻、じゃなくてリンネである。

リンネが、マルスとビーナスを雄と雌の代表として、それを示す♂と♀という記号を、雄と雌を意味すると決めたということになる。ただの約束事という意味からすれば、♂♀の記号はシンボルということである。もちろん、盾と矛・手と鏡を意味するものと受け取るならば、アイコンということにもなるだろう。ところが、

 僕の中学の先生は“♂”を教えるのに、「何でこれがオスか、見れば分かるね、エヘヘ」と言っていたが、彼は“♂”がアイコン(icon)だと思いこんでいたのだ。そして、自分のはこんなに尖ってないと思春期の中学生を悩ませたのである。

私もまったく同じようなことを考えていて、♂にしろ♀にしろ“○”の部分がどうもしっくりマッチしないなあと思ったりもした。インターネットを検索してみても、♂♀が男女の生殖器を表していると思いこんでいる人も多いようだ。


生物学を専門にする人も専門でない人も、♂♀の記号については、生物学を学んでいる過程のどこかで目にして、いつのまにか当たり前のように使っていたものだろう。しかし、そのいわれや記号として意味するところを、はたたしてどれくらいの人が知っているだろうか?