大阪府立の博物館は、ちょっと変だぞ

博物館のことをいっぱい書いたので、勢いで、日頃思っている大阪府立の博物館への文句を少しばかり書いてみたい。(以下のことは、個別の博物館に働いている人に対する文句ではなく、博物館の構想をつくった人たちへの批判です。念のため。)


先に触れた「レプリカ礼賛」の文章の著者は、大阪府立弥生文化博物館の人だった。泉州ミュージアムネットワークに含まれている博物館の中でも、弥生文化博物館は、かなり大きな博物館の部類に入るだろう。大きいから、批判の対象に取り上げても、まあ許してもらえるだろう。


弥生文化博物館に行ったのは何年か前になるが、そのときの印象は、歴史博物館にしてはちょっと変わってるなあというものだった。オーディオガイドを無料で貸してくれるのも驚きだったが、大げさなパノラマ模型のようなものが多くて、なにかのテーマ館を訪れているような気がした。それで、上の「レプリカ礼賛」の文書を見ると、はたと納得させられた。名前からしても、「弥生文化」全般を取り扱っているつもりらしい。だから、池上曽根遺跡のそばにありながらも、それにはしばられていないということなのだろう。


このなにか変わっているなあと思う気持ちは、狭山池博物館に行って、さらに強まった。その気持ちを確かめるために、さらに近つ飛鳥博物館へ行って、確信になった。これらの博物館の計画を立てた人の発想が、ちょっとおかしかったのではないかということである。他の府立博物館として、泉北考古資料館にも行ったが、こちらはまともだった。おそらく開館した時期が古いので、おかしな風潮からはまぬがれているのだろう。


そのおかしさは、近つ飛鳥博物館の「博物館建設基本構想」を読むとはっきりする。


特色
<近つ飛鳥の歴史と文化のストックを活かしたふるさとづくり>の
一翼をになう歴史博物館はいかにあるべきか。
「博物館行き」ということばに象徴されるような陳列館的な、
古色蒼然たるイメージの博物館であってはならない。
【中略】
●わかりやすい歴史と文化の展示
府民に親しまれ新しい大阪文化の創造につながる魅力ある展示)

考古資料、文献資料などの実物をはじめ、
レプリカ、模型、グラフィックパネル、マルチビデオ、マルチスライド、
コンピュータグラフィックス、ハイビジョンなど多様な資料とメディアを駆使し、
カラフルで動きのある多角的な展示をおこない、
近つ飛鳥を中心にした歴史と文化を楽しく学べるようにする。

すなわち、従来の展示カラーを打ち破る
新しい切り口にもとづいた展示にこころがける。

要するに、新しい形式の博物館を目指すということらしい。それで、「レプリカ、模型、グラフィックパネル、マルチビデオ、マルチスライド、コンピュータグラフィックス、ハイビジョンなど多様な資料とメディアを駆使」するというのだが、その実例のひとつが、展示室の真ん中にでんと居座る「径10mの仁徳陵古墳復原模型」となるらしい。近つ飛鳥という場所で、なぜ百舌鳥古墳群の仁徳陵なのだろう。百舌鳥古墳群のことを展示するなら、堺市博物館もあるし、古墳の巨大さを示すならば、その古墳の周辺を歩けば、実感できるだろうに。


そして建物が、近つ飛鳥や狭山池博物館は、安藤忠雄の設計である。建物自体がモニュメントということらしい。かなり“特徴的”な建物で、好みによって、評価も分かれるだろうが、歴史と向き合う建物としてふさわしいかどうかである。1000年以上の歴史と対抗させられるのでは、安藤忠雄も気の毒である。


マルチメディアやらレプリカやらの巨大なニセモノは、一度見たら二度と見たいとは思わないだろうし、すぐに時代遅れになる。3館のホームページを見ていると、常設展以外に、特別展やテーマ展示に力を入れているようだ。そこではホンモノに即した展示が行われているようだ。このような現在の学芸員の努力を好ましいものと思う。それだけに、なぜあのようなバカげた博物館の構想を作ったのかが、腹立たしくなる。


今となって見れば、バブルの時代の風潮だったのかも知れない。この時代に、大阪府の博物館行政を牛耳っていた人が特定できるのなら、誰か教えてください。