蛾の幼虫いろいろ:トビネオオエダシャク、マイマイガ、ヨモギエダシャク、トビモンオオエダシャク

昨日は蛾の成虫を掲げたので、今回は蛾の幼虫をまとめて掲げる。


トビネオオエダシャク
この種類は、畑をひっくり返していたら、ヒョコヒョコと歩き出してきたものである。元々はなにかの草か作物に付いていたのかも知れないが、模様が特徴的なので、同定できるのではないかと思って、写真に撮った。



(2012/04/30 撮影)

いつもの岐阜大学のサイトで、「ガの幼虫図鑑」を見ると、シャクガ科に属するようである。それで、「みんなで作る日本産蛾類図鑑V2」のシャクガ科の幼虫を順番に見て行ったら、トビネオオエダシャクでないかと思えた。

同定にもまったく自信はないし、付いていた植物の情報もないので、単に見つけましたというだけなのだが、ブログで扱っておけば、次になんらかの関連も考えられるかと思って、一応掲げておく。


マイマイガ
この種類も、模様が特徴的だから、同定できるのではないかと思って写真に撮った。



(2012/05/01 撮影)

ところが、前にモンシロドクガとした種類を取り上げたときに、このような毒々しい模様をしたものは、却って同定が難しいのだと痛感したことを思い出した。

群馬大学の「幼虫図鑑」のサイトから、毛虫のところのそれらしいものを順番に開いていって「マイマイガ」ではないかと見当をつけた。さらに、「みんなで作る日本産蛾類図鑑V2」でも、それらしい毛虫の写真も載っているから、このあたりだと思える。

アカメガシワの葉には、花外蜜腺があって、そこにアリが寄ってきて、葉っぱに他の虫が付かないようになっているとのことは前に触れたが、場合によってはこういう幼虫が入り込むこともあるようだ。「マイマイガ アカメガシワ」で検索してみても、多少は引っかかるようだから、まったくの外れでもないだろう。


(2012/06/06 追記):生垣のレッドロビンの葉っぱに、マイマイガのよく成長したものが見つかった。



(2012/05/25 撮影)

このように大きくなったのを見ると、前の方に4対の青い粒と、後に6対の赤い粒が見える。幼虫図鑑では、青い粒は5対あるそうだから一番前のところが隠れているのだろうか。



(2012/05/25 撮影)

この個体を見つけたときには、実際には、上のように別の毛虫が並んでいた。2種の毛虫の遭遇と思ったものだが、この種類を同定しようとすると、なかなかぴったりするものに出会えなかった。

ところが、いつもの岐阜大学のサイトを見ていて、「マメドクガの幼虫」で脱皮した直後の脱皮殻といっしょに写っている写真があった。そういう目で見てみると、脱皮したものと見えないこともない。幼虫図鑑の8枚目の写真でも、やはり脱皮殻が写ったものがある。

当初、脱皮だと気が付かなかったのは、脱皮殻が意外と小さいことも影響している。これがエビやカニなどの甲殻類ならば、2−3割の増加といったところだろうが、この場合にはほぼ2倍くらい大きくなっている。イモムシ・毛虫では、クチクラも大して硬くないので、脱いでしまえば、縮んでしまうのだろうか。

--------------------


以下の2種は、バラの木に付いているのを妻が見つけて、写真を撮るように言われたものだった。どちらも、見事にバラの枝に化けている。私の乏しい昆虫の知識でも、うしろの2対の足が発達しているようだから、たぶんシャクガの仲間だろうと見通しをつけて、「バラ 害虫」「バラ 擬態 シャクガ」などで検索をしながら、種類を絞っていった。


ヨモギエダシャク



(2012/05/06 撮影)

このヨモギエダシャクという種類は、バラの“害虫”としては有名なものらしくて、その駆除の方法を書いたサイトが多くヒットする。バラをキレイに咲かせようとする人には大敵なのだろうが、我が家ではチュウレンジバチに食べられて丸坊主にされようが、それも自然の摂理と諦めている。

これといった特徴がないので、色違いで他の種類と混同しているかも知れないのだが、体の後半の3分の1のところの背側に、ポッチリとした出っ張りが出てくるらしい。この個体では、点のような感じで見られる。


トビモンオオエダシャク



(2012/05/06 撮影)

こちらの種類は、頭の部分が角のように出っ張っている特徴から、トビモンオオエダシャクと同定した。この角の部分は、蛾のことだから、前後を紛らわせるために尾の部分なのかと思ったが、素直に頭だったようだ。

この種類の学名は、Biston robustum (or robustus) となっている。Biston といえば、Biston betularia オオシモフリエダシャクという名前を思い出す。進化論における工業暗化の例として取り上げられるものである。それで、この属のリストを「みんなで作る日本産蛾類図鑑V2」でみると、なんとオオシモフリエダシャクは日本にもいるのだった。それならば、日本でも同じような体色の変化が起こったのではないかと思うのだが、Wikipedia工業暗化の記述によれば、日本では黒色の変異個体が見つかっていないらしい。

さらに、Biston のことを検索していて、Biston robustum についての英語の Wikipediaのサイトを読んでいると、この種類では化学的擬態ということで、食べた植物の物質を蓄えることによって、アリからの捕食を逃れるらしい。しかもこのような研究例として、日本の研究者の論文の PDF がリンクされている。

たまたま見つけたイモムシが Biston ということだけのことだったのに、調べ始めると奥が深そうだ。